こんにちは! ゆったです。
今回は、ショッキングな展開が話題になったクライムサスペンス『隣人は静かに笑う』をレビューしていこうと思います。
最後の展開は非常に後味が悪いので、観るのには相当な覚悟が必要です。
しかし、不気味なオープニングや大胆な伏線回収、後半のスリリングな演出は一見の価値ありだと思います。
そんなサスペンスの傑作を、早速紹介していこうと思います。
隣人は静かに笑う』の日本版ポスター 『

※サムネイル画像はTMDBより引用しています。
作品情報
原題 / Arlington Road
製作年 / 1999年
製作国 / アメリカ
上映時間 / 119分
ジャンル / クライム・サスペンス
※Filmarksより引用
監督は「コールドケース 迷宮事件簿」ドラマシリーズのマーク・ぺリントン。
脚本は、「トランスフォーマー」シリーズの一部や、「トップガンマーヴェリック」で脚本を務めたアーレン・クルーガーです。今年の夏、彼はジョセフ・コシンスキー監督最新作「F1 / エフワン」の脚本も担当するため、注目が集まっています。
主人公のマイケル役をジェフ・ブリッジスが演じています。「アイアンマン」や「ビッグ・リボウスキ」など有名な作品に多数出演している、演技派の役者さんです。
そして、今作の肝になっている隣人のオリヴァー・ラング役を、「ショーシャンクの空に」で主演を務めた名優ティム・ロビンスが演じています。「ショーシャンクの空に」からは想像もつかないような彼の怪演も、この作品の見所の1つになっています。

他にも、「スクール・オブ・ロック」で校長役を務め、また俳優ジョン・キューザックの姉であるジョーン・キューザックや、「アンブレイカブル」で主人公デヴィッド・ダンの息子役を演じたスペンサー・トリート・クラークなど、意外に豪華なキャスト陣が揃っています。
隣人という関係だからこその絶妙な距離感を活かした設定と、テロリズムなどの社会派なテーマ性を織り交ぜたストーリーに恐怖して、最後の展開にはぜひ驚愕してもらいたいです!!!
それでは、[簡単なあらすじ]に移りましょう。
簡単なあらすじ
大学教授のマイケルは、ワシントンD.C.郊外で幼い息子と暮らしていた。FBIエージェントだった妻は2年前に殉職し、今もその悲しみは消えていなかった。そんなある日、マイケルは道で大けがを負った少年を助けたことから、隣人のラング一家と親しくなり…。
ざっくりと結末まで
マイケル・ファラデイ(ジェフ・ブリッジス)が助けた少年は、隣人のラング家の息子であった。その出来事により、ファラデイ家とラング家と親しい間柄になり、また両家の息子たちが同年代ということもあってか、彼らはどんどん交流を深めていった。そんな中、マイケルはラング家の亭主であるオリヴァー・ラング(ティム・ロビンス)が、テロを計画していることに気付く。マイケルは亡き妻が働いていたFBIに協力を求めるも、少ない証拠かつ一般人からのタレコミでFBIが動くはずはなかった。隣人のテロ計画を阻止するため、マイケルは1人で戦うことを決意する。
マイケルが探りをかける中、オリヴァーは確実に動いていた。マイケルの行動を既に監視下に置き、着実にテロ計画を進めていた。
そんな中、今のマイケルのパートナーであったブルック・ウルフ(ホープ・デイヴィス)が殺されてしまう。マイケルは悲しみに暮れる中、彼女がテロに関する情報を握り、それを渡そうとしたために殺されたことに気付く。オリヴァーたちにパートナーを奪われたマイケルは、より深く計画を調べていく。
そしてテロが実行される日。マイケルはレンタカーを使い、オリヴァーらを追っていた。そして爆弾が運こまれたトラックを目撃し追いかけ始める。FBIで止まったトラック。マイケルはFBIの職員たちに爆弾の存在を主張する。しかし、トラックに爆弾などはなく、勝手にFBIに入り込んだマイケルのみが奇異の目で見られた。
その時、マイケルに嫌な予感が走る。この中で爆弾が積まれうる可能性のある車は、マイケルのレンタカーのみだと。レンタカーのトランクを急いで開いたマイケル。予想通りその車のトランクには爆弾が積まれていた。絶望するマイケルを横目に、車は大爆発。FBIの本部も爆発し、メディアはマイケル単独によるテロ行為だと報道した。
オリヴァーは静かに笑った。マイケルの行動を監視し、犯人に仕立て上げ、完全犯罪を成し遂げたのだ。
テレビではマイケルについてが語られた。「最近の様子がおかしかった」「FBIに恨みを持っているようだった」。確証もないことでマイケルの印象が固められていく。息子の目に映ったのは、犯罪者としての父親だった。
そして不敵な笑みを浮かべ、別の町に引っ越す準備をするオリヴァーを映し、物語は幕を閉じる。
ネタバレありの感想解説
簡単な感想
こんなバッドエンド、久しぶりに見たわ…。
完璧な完全犯罪、気付いた頃には自分も主人公も罠にはまっていました。
初めのシーンから引き込まれ、オープニングの不穏さはこれから起こる出来事の予兆のようでした。
ラストシーンに近づくにつれ、緊張感を煽るようにグラグラとしたカメラワークで、なおかつ焦った主人公の顔のクローズアップが多用され、こっちまでドキドキする映像体験でした。
緊張感を煽ってくる、まさにサスペンスの醍醐味が詰まった作品だなという印象です。



これらの素晴らしいサスペンス要素だけでなく、ジェフ・ブリッジスとティム・ロビンスの2大スターの演技合戦もとても見応えがありました。
特にティム・ロビンスの演技はミステリアスなオーラを纏い、言葉では表せないような気味悪さ持っていました。また彼だけでなく、隣人オリヴァーの妻であるシェリル・ラングを演じたジョーン・キューザックも、顔に張り付いた不気味な笑顔が非常に印象的でした。



ジョーン・キューザック)、右がブルック(ホープ・デイヴィス) 左がシェリル(


最悪で最高の伏線回収
この作品の魅力は何と言っても伏線回収です。
本編全てが伏線になっており、終盤になって一気に回収される様は最悪かつ最高です。
特に私が好きな伏線は、“周りから見たマイケルの姿”です。
彼の亡くなった奥さんはFBIに勤めており、任務中に殉職しています。この殉職には幾つか疑問が残っており、FBIのミスであった可能性もありました。しかしFBIはこの事件の詳しい釈明をしないため、マイケルは憤りを感じていました。またマイケルは大学でテロリズムの歴史を教えていました。彼は過去のこともあってか、よく授業内でFBIに対する不信感を言及していました。
そして、彼が隣人のテロ計画を知ってからは、授業内で感情を吐露することも多くなりました。テロを止めるという使命感と焦りから、他の人から見た彼の姿は普通とはかけ離れたものでした。
ジェフ・ブリッジス) 隣人を監視するマイケル(


その後、結末となる爆発事件が起こり容疑者に挙がったマイケル。
彼の最近の様子がおかしかったこと、FBIに不信感を持っていたことが、周りの人たちからの評判として報道され、罪を犯したのは彼だと決めつけられる状況になってしまいました。



主人公目線で物語が進むため、私も彼の行動の悪い部分には、最後まで気付きませんでした。
また、次の[たった1人の犯人]でも紹介するように、犯人になった大きな要因はもう1つあります。
たった1人の犯人
この映画では多くの社会的なテーマが語られています。
安心のために犠牲になったたった1人の犯人、正義を為したはずが逆に悪者になってしまう皮肉。周りからの勝手な評価で人の印象が作り上げられ、それをあたかもその人の全ての人格であるかのように放送するメディアなど…。
強烈に印象に残ったのはこの“安心のために犠牲になった、たった1人の犯人”というテーマ性です。
これは作品内で、主人公が何度も主張していたテーマでもあります。
この作品内で、マイケルのテロリズムについての授業で、過去に起こったある爆破事件を取り上げています。
その事件は、連邦ビルの前に止まっていたトラックに積んでいた爆薬が爆発したことで、そのビルの職員ら60人余りが帰らぬ人になったというものです。犯人はそのトラックに乗っていた33歳の電気技師の男性であると結論付けられました。この男性の標的になり得る施設がこのビル内にあったことで犯人だと断定されたものの、彼を昔から知っている人は、彼は優しい人でそんなことするはずがないと話していました。
「我々は責める相手が必要だった。1人の男を…すぐに必要だった。」
マイケルはこの事件を振り返り、この電気技師が犯人ではない可能性もあると考えていました。
たった1人、犯人を決めつけることによって、社会のみんなが安心して暮らすことが出来る。そういう罠にこの男性は嵌ったのだと考えていました。
ここで気付くと思いますが、その後これと全く同じことが主人公の身に降りかかります。
詳しく調査をすれば、オリヴァーという存在が出てくることもあるかもしれない。しかし、社会の安心のため、みんなが幸せに暮らすための犠牲として、マイケルは1人の犯人になってしまったのです。



これらの要素が絡み合い、終盤の最悪な展開がより強烈な印象を持つように仕上がっています。
また主人公には息子がいるのですが、その子は後に親戚に引き取られるという形で物語が終わっています。
この子にとっては、自分の優しい父親が急に犯人として扱われ、深い傷を心に負っているんじゃないかと思いました。



そしてこうなったときに感じるのが、『隣人は静かに笑う』というタイトルの秀逸さ。原題の『Arlington Road』では作品内の通り名にすぎませんが、この邦題だと正義を実行した男を罠にはめ、静かに笑みを浮かべるオリヴァー・ラングを的確に表した秀逸な題名だと思います。
ティム・ロビンス)たちが静かに笑うラストシーン オリヴァー(


これらの伏線やテーマ性で、残酷な話でありながらも、他より数段飛びぬけた作品になっていたと思います。
お気に入り度
4.5/5.0
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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最後に商品ページと各サブスクへのリンクを貼っておきます。
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※投稿当時(2025/07/30)の配信状況であるため、今現在の様子はご自身でご確認ください。
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